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zoom RSS David Bowie 『ジギー・スターダスト』(1972年)

<<   作成日時 : 2016/07/21 18:07   >>

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原題:The Rise and Fall of Ziggy Stardust and the Spiders from Mars
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この間急逝したデヴィッド・ボウイのグラム・ロック期の代表作でありコンセプト・アルバム。
「地球へやってきた宇宙人がロックスター、ジギー・スターダストとなり栄華を極めるが最終的に没落していく」という内容のコンセプト・アルバムだと一般に理解されていると思うが(普通に考えてトンデモストーリーだよな)、昔調べたとき、意外とストーリーラインは定まっていないのねって思いまして。

そもそも最初に自分が聴いたときは歌詞がわからないのでこのアルバム自体もよくわからないわけですけど、「Five years」で運命を決定づけられて降臨して、「Starman」「Lady Stardust」あたりで全盛を極めて、でも「Ziggy Stardust」で滅びたことが語られて、「Rock & Roll Suicide」で自殺、みたいなアルバムなんだろうなぁ、と思いながら聴くとなるほどなるほどなぁ、とか思ってて好きになりました。…・…ですが、「Five Years」は降臨の歌でもなんでもなくて、世界があと5年で滅ぶよ〜〜って曲なんですね。さっき調べて知りました。どちらかというと降臨してるのは「Starman」なんですね。


そもそも昔調べたときは、宇宙からの怪電波かなんか、もしくは宇宙から流れたロック・ソングに衝撃を受けてロックスターになった少年の栄枯盛衰みたいな解説も読んだことがあって俺の知ってる話と違う!そうだったのか!とか思ったけど今調べても出てこねえ。でもそれ、「Starman」の解釈次第なんですよね。「Starman」は、宇宙人が(ラジオをジャックかなんかしたんだろう)ロックを流して、それに少年が衝撃を受けるっていう歌詞で。この解釈なら、「宇宙人が地球に来て何故かロックスターになる」というトンデモストーリーよりは納得が出来るかなっていう。でも、その前の「Moonage Daydream」で既に「俺は宇宙の侵略者、お前の為のロックンロールビッチになってやる」みたいな歌詞があるんでよくわからんね。その前の2曲の中身が、世界の崩壊が迫っていて世界が混乱している、人々は救世主を待ち望んでいる、って感じで宇宙人は出てこない。
「Star」の冒頭で「トニーはベルファストの戦いに出向いて行った」「ルーディは腹を空かせて家に残った」「ベヴァンはこの国と国民を変えようとした」「サニーは世界を変えようとした」ってところは、少年=ロックスター説をとると、一緒にロックを聴いていた友人達なんじゃないかなとか思ったりする。宇宙人説をとっても、他の宇宙人たちは地球に降り立って人間たちに混じって生活者として暮らすか変革への行動を起こしたが……っていう。ちょっと妄想が過ぎるか。この主人公・ジギーが「宇宙人」のような才能を持った人間、のほうがそれっぽくない?(宇宙人設定でもこのアルバム自体が比喩なわけだけど)。


全盛を極めたロックスターも、そのロックバンドのメンバーの一人に「あいつのギターはすごかったよ…」と過去を懐かしむように語られる「Ziggy Stardust」で、ジギーが既に過去の人、没落していることが示唆されるわけですが、その次の曲「Suffragette City」だけ長年意味がわかりませんでした。「女性参政論者の街」って何やねんっていう。
でもネットで「娼婦の街」ってことなんじゃないかという話聴いてなるほど、と。娼婦街の皮肉の効いた言い方が女性の権利を謳う街。みたいなね。ジギーが娼婦街に入り浸ってヤリまくってる、堕落しきってるっていう曲なんでしょうね。凄く納得しました。


そしてラストの「Rock & Roll Suicide」なんですが邦題が「ロックンロールの自殺者」なので、ああジギーも没落の果てに自殺しちゃったなくらいしか思ってなかったんですが、直訳すれば「ロックンロール自殺」であって、「自殺者」ではない。ロックンロールの自殺。でも多分ロックイズデッドみたいな意味では無いでしょうし、つまりロックンロールをすること自体が自殺みたいなもんでしょ、っていうタイトルなんだろうと考えました。歌詞の内容は、ステージでは聴衆が待っている的なロックスター状態がまだ続いているとも考えられるし、それに反して内面はズタボロ、みたいな詩に読み取れます。ユーアーロックンロールスーサイド、なのですからこの曲の「you」は
ジギーを指すのだとしたら、「You're not alone」「Let's turn on with me」とか言われてるのはジギーで……。うーん、この曲の解釈は難しいですねぇ。僕としてはスターとしての「ジギー」とそれを演じる「自分」との対話と言うか、両者のズレが大きくなって精神を崩壊してきて、それでも奮い立とうとしているというか…。「Wonderful!」ってどの辺がワンダフルなんだ。ロックンロールは素晴らしい、俺自身を滅ぼしてしまったが、それでもロックンロールは素晴らしい、という歌なのだろうか。(今回はそういうことにしておこう)


となると、ライナーに書かれていた記憶があるが「Five Years」がシーンの移り変わりが5年ごとである、という説は正しいのかもしれない。最近本当によく思う。メジャーで好きなバンドは地位を確立しなければ5年くらいで解散するかインディー行きの時代だ。3年間くらいかもしれんが。最近よく見る光景だ。いや、多分こういうことはずっとずっと続いていく、繰り返されてきている。1972年の時点で、デヴィッド・ボウイは既にその儚さを歌ったのだ。だからこそこのアルバムは語り継がれているのだろう。



音楽的なことを全く書いてなかった。本当にきらびやかな音だ。アコースティックギターとピアノを多く配し、きらびやかな演出をするとともに、ビートは8ビートが多く割と王道のロックンロールをやっている。だいぶポップな形に加工されているけれども。グラム・ロックのもう一人の雄、マーク・ボラン率いるT-REXは、チャックベリー風50年代ロックンロールを甘いシロップで薄めたような、いい意味で軽薄なブギーだった。表層を滑るきらびやかな音だ。このアルバムにも、それに共振するような切ないキラキラがあり、ブギーがある。このサウンドこそ、アルバムのメッセージを補完しているのだと強く思う。グラム・ロックとは化粧をしてグラマラスなアピールをしたロックという意味で、特に音楽的には定義は決まっていないはずだが、多くは原始的なロックンロールを演奏していた。その「シンプルなロックへの原点回帰」は、数年先に起こるパンク・ロックの導線となる。「サフラゲット・シティ」のライブバージョンを聴けば、それはあまりに明らかだろう。



今聴くとオールド過ぎてダサく感じちゃうメロディーラインもあるけどけっこうキャッチーだし、楽曲面、サウンド面、メッセージ/コンセプトの面、トータルで完璧なアルバムだと思います。今回聴き直して、調べ直して改めて思いました。



※今回の記事、いろんなHPを参考にしましたが特にここの訳&解釈がとても参考になりました。
http://d.hatena.ne.jp/komasafarina/20050717
特に「サフラゲット・シティ」「ロックンロール・スーサイド」の解釈はこちらを元にしています。






ボートラにアコースティック版みたいなの入ってるんですが実はそっちのほうが好きです。


原曲こんなBPM早くないです。久保憲司氏のボウイ特集記事(ググれば出るはず)でこのバージョン知りました。パンクです。


すげー、アーケイドファイアとの共演。

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コメント(3件)

内 容 ニックネーム/日時
普遍的な名盤ですよね。僕にとっては時代がいくら変わってもこの輝きは消え失せないと思います。
最終曲の『ロックンロールの自殺者』はたくさんの解釈がありますが僕はボウイから不特定多数のリスナーへのラブソングだと思います。
「失うには年老いすぎ 選ぶには若すぎる」と上手くいっていない人たちへむけたあなたは一人じゃない、自分のことばっかり考えんなよと、決して手遅れなんてことないよと背中を押してくれるラブソングだと思って聴いています。
マコト
2016/08/21 22:29
>マコトさん
返信がだいぶ遅くなりました…。
「手遅れなんてことないよ」というメッセージ・ラブソングならば、やはりこのアルバムで語られてきたロックスターの悲劇のストーリーを踏まえて、そう最後に語られるといった感じなのでしょうかね。「失うには年老いすぎ 選ぶには若すぎる」という一節は非常に重いですね。
たびけん
2016/10/06 22:35
返信ありがとうございます。
たびけんさんは『★』をお聴きになりましたか?
ジャズミュージシャンの起用ということで難しそうな印象がありましたが、ドラムンベースを思わせる曲があったり、高校のときに初めてマーズヴォルタを聴いたような気持ちが湧き上がってきてエクストリームなアルバムでした。

ジギーの歌詞ばかりの感想でしたので少し補足の感想を書きます。
「サフラゲットシティ」のライブバージョン初めて聴きましたがこれはもうパンクですね。リズム隊をルーズにさせて、ギターのサステインを長くしたらoasisの「ロッックンロールスター」になるんじゃないかと思いました。昔スヌーザーでノエルはミック・ロンソンが好きだよなあと書かれていてそのときはわからなかったのですがこれを聴いて少し納得させられました。でも僕はアルバムテイクの方が圧倒的に好きだなあ。
「スターマン」マイナーで始まってサビで明るくなるだけなのにこんなにマジカルな曲になるのか不思議。桑田佳祐が追悼の意を込めてラジオでカバーしていましたが氏の個性が強すぎて終始陽性のポップスになっていました。
「ジギースターダスト」はデイトリッパーに並ぶ最高のリフソングだと思います。
コンセプトアルバムのためか曲の充実度としては前後の『ハンキードリー』、『アラジンセイン』に軍配が上がるかな。2枚ともミック・ロンソンがギター弾いてる。でもジギーもいいアルバム。

しかし全キャリアを通じて多彩な曲を作っているボウイはペテン師というかトリックスター的なところがあるので歌詞にいちいち惑わされない方がいいのかななんて思ったり。
つちふまず
2016/11/03 11:59

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